PAC-MAN 40th ANNIVERSARY COLLABORATION JOIN THE PAC INTERVIEW PAC-MAN 40th ANNIVERSARY COLLABORATION JOIN THE PAC INTERVIEW

「パックマン」が生誕40周年を迎える2020年、「Join the PAC “仲間に加わろう”」をテーマに、ワールドワイドに様々な楽しいコラボレイトが展開されます。
このサイトでは、パックマンサウンドをモチーフに制作された新曲を収録した、『パックマン』40周年公式アニバーサリー・コンピレーションアルバム『JOIN THE PAC - PAC-MAN 40th ANNIVERSARY MUSIC ALBUM -』に参加するアーティスト達の対談によるスペシャル・インタビューを掲載します!

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sasakure.UK × 中塚 武
『パックマン』から『ゼビウス』、『ドルアーガの塔』まで、屈指のゲーム好きでもある両者の音楽&ゲーム談義!
それぞれのクリエイティビティにおいてビデオゲームが与えた影響とは?

インタビュー:遅澤 淳(U/M/A/A Inc.)  
テキスト・編集:ローリング内沢
2020.6.24 Wed.

ゲーム、日本文学、寓話などの影響を受けつつ、豊かな物語性を感じるサウンドを生み出すアーティスト、sasakure.UK(ササクレ・ユーケイ)。
その個性的な楽曲のみならず、自らが手掛けるドット絵のアニメーション、アートワークなどでも大きな評価を得ており、まさに映像・アート・ゲームといったメディアと親和性が高いミュージシャンのひとりである。
かたや、中塚 武は、1997年に主宰のバンド・QYPTHONE(キップソーン)で海外デビューして以降、自身のアルバム制作をはじめ、テレビドラマへの楽曲提供、CM音楽の制作、他ミュージシャンの楽曲プロデュースやリミックスなど、マルチに活動を続けるアーティストだ。
幼少期には、ゲームミュージックをリコーダー(笛)で吹いていたほどのゲーム好きで、その好きが高じて大学卒業後にはナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメント)へ就職した経歴を持っている。
そんな、ビデオゲームに造詣が深い2組のアーティストによる初対談は終始、音楽愛とゲーム愛に満ちたトークに包まれた。

ゴースト4体がフリースタイルでラップをしていくという感じ(中塚)

ー 『パックマン』40周年記念コンピレーションアルバムへのご参加、ありがとうございます。音楽性やフィールドは違えど、おふたりの楽曲を聞かせていただいて勝手ながらすごく良い相性を感じました。今回、さまざまな『パックマン』サウンドを使っていただきましたがいかがでしたか?

sasakure.UK:『パックマン』の効果音を自由に使えるというのが楽しかったです! (パワーアップしたときの)"パックマン"がゴーストを食べるときの「ギュワワ~」っていう音がめっちゃ好きなので、たくさん使わせていただきました。また、そもそも『パックマン』は、"女性やファミリーを意識して作られた"という背景があるので、"かわいいニュアンス"と"ソリッドなニュアンス"、そのバランスにこだわって作りました。いろいろな人に聞いてもらえるような楽曲に仕上げています。

中塚:ゴーストにかみつく音、いいですよね。ボクも大好きです(笑)。

sasakure.UK:あの音いいですよね!(笑)

中塚:だから、ボクの曲では、いろいろと加工をしたり、カットアップしたりと、さまざまな音を散りばめてあるなか、あの"ゴーストにかみつく音"だけは、ボーンと裸のままで使ってます。 『パックマン』サウンドで、きちんと音楽になっているのってオープニングとコーヒーブレイクの曲くらいですよね。あとは、すべて効果音。 そこで、当初は、コーヒーブレイクの曲をビッグバンドでやろうかなと思ったんですよ。でも、やっぱり、筐体に100円を入れたときに「♪テテテテ、テテテ、テテテテ、テテテ~」って鳴るオープニング曲がボクのゲームの原体験でもあるので、このチャンスにオープニングの曲を使わないというのはないな、と思って。そこで、オープニング曲をメインにして、ゴースト4体がフリースタイルでラップをしていくという感じで作ったんです。

sasakure.UK:おお! やはり、あのラップは"パックマン"ではなく、ゴーストのイメージだったんですね。

中塚:そうなんです。4体のゴーストって、赤は追いかける、ピンクは待ち伏せする、水色は気まぐれ、オレンジは好き勝手に行動する、というように全キャラ性格が違うんですよね。その性格を軸に、まずラップの歌詞を作って、その歌詞をネイティブな外国人にふつうに読んでもらって、それでカットアップでラップにしていったんですよ。

sasakure.UK:いや、めちゃくちゃカッコイイいいですよね、あのラップ。初めて聞かせていただいたときに衝撃を受けました!

大久保 博さんの『EAT'EM UP!』くらい面白い楽曲にしたい(sasakure.UK)

― sasakure.UKさんは、さまざまなゲームの楽曲制作を手掛けられていますが、今回の制作はそれらとどのように異なりましたか?

sasakure.UK:曲作りの進め方的には、いつもとあまり変わらない感じでしたけれど、今回『パックマン』サウンドを使わせていただくにあたり、40年という、とてつもなく長く続いたコンテンツを自分なりにどうアウトプットするか、という部分に悩みました。自分の感性で、『パックマン』サウンドをリアレンジするにあたり、「新しい音も聞かせたい」と思いつつも、「昔から(『パックマン』サウンドを)聞いてくれている人にも喜んでもらえる音にしたい」という部分でのバランス調整に時間をかけました。
じつは今回の楽曲制作にあたり、3つ、4つくらいのアイデアがあったんですね。たとえばコーヒーブレイクのメロディを、ちょっとおしゃれな感じにするとか、シンセっぽいクラブっぽい感じにするとか。また、フューチャーベースにするか、それとも少しクラブナイズドしたアレンジにするか、という部分でも試行錯誤しながら何パターンか作ったのですが、そのなかで、何年経ってもずっと聞いて寄り添ってもらえるものはどれかな、って考えたときに、いまの形のものが残ったんです。

中塚:なるほど! コーヒーブレイクの部分は、最初リバースを使っているのかと思ったのだけど、よくよく聞いてみると、カットアップを使ってるんだな、って。

sasakure.UK:そうなんです! 声を使ったり、サックスをサンプリングしてメロディにしたり、いろいろなことに挑戦しています。

中塚:さすが、めちゃくちゃカッコいい!

sasakure.UK:ありがとうございます! ちなみに『パックマン』サウンドのアレンジという話で言えば、レースゲーム『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』(1998年・バンダイナムコエンターテインメント)に収録されている、大久保 博さん(バンダイナムコ研究所所属のサウンドクリエイター)が作った『EAT'EM UP!』という曲が、当時、自分のなかでかなりの衝撃で、大好きな曲のひとつでもあるんです。だから、今回のお話をいただいたときに、『EAT'EM UP!』くらい面白い楽曲にしたい、という気持ちで作らせていただきました。

岩谷 徹を求めてナムコを受けたんです(中塚)

― 中塚さんは、ナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメント)の開発企画部に在籍されていた経歴があるそうですが、今回は『パックマン』のコンピレーションアルバムの楽曲提供という形で参加`してみた心境は?

中塚:幼少期から『パックマン』をはじめとする、いわゆる"ナムコ黄金期"と呼ばれる時代の作品が大好きなんです。小学生のときに『パックマン』を作った人のインタビューが、『BEEP』っていうゲーム雑誌に載っていて、その方が、岩谷 徹さんだということは知っていたんですよ。それで大学生時代に、「岩谷さんってまだナムコに在籍されているのかな」と思って調べたら、当時、アーケードゲームの開発企画部の部長さんだったんです。だったら、絶対に開発企画部を受けようと思いまして、岩谷 徹を求めてナムコを受けたんです。それくらい『パックマン』は大好きなゲームなんです。

sasakure.UK:そうなんですね。

中塚:ナムコには3年間しかいなかったんですけど、その3年でアーケードゲームの企画をふたつ手掛けました。当時は、4月に入社後すぐに、ゲームセンターでの新入社員研修みたいのが2ヵ月ほどあって、6月から開発企画部で働くことになるんですけど、最初はひたすら企画書を書かされるんですね(笑)。「何でもいいからアイデアをすべて企画にしろ」という、いわゆる企画研修のようなことをやるんです。それで、1週間に20個ぐらい企画書を出して、最後に、部長さんたちが集まっているまえでプレゼンテーションをするんですよ。そのころは、ちょうどアーケードゲームの全盛期で、『プリント倶楽部』(1995年・アトラス)が流行りだしたころ。ナムコで言えば、『レイブレーサー』(1995年)が出たあたり。インターネット通信もまだ遅い時代ですよ。そんな時代に、"CCDカメラでプレイヤーの顔を撮影し、それをポリゴンに貼り付けて、みんなでトラックボールをゴロゴロ転がしながらおはじきをする"というようなゲームの企画を出したら、お偉いさんたちから「技術的に本当にできるの?」って言われて。「いや、研究部ができるって言ってました!」なんて答えたら、そのまま顔面取り込みの技術研究に取り組むことになったんです(笑)。その成果としてリリースされたのが、戦車戦シューティングゲーム『トーキョーウォーズ』(1996年)の続編となる、対戦ガンシューティングゲームの『ガンメンウォーズ』(1998年)です。その後、レースゲームの『レースオン!』(1998年)、など、"顔面取り込みシリーズ"としてシリーズ化もされたんです。

※参考資料 バンダイナムコエンターテインメント社ホームページより

― それらの作品の音作りも手掛けられたんですか?

中塚:音作りにはまったく関わっていないです(笑)。ただ、プライベートでQYPTHONE(キップソーン)というバンドをやっていて、そのバンド活動が忙しくなり、辞めざるを得なくなって、それでナムコ入社3年で辞めちゃったんですけど。

― そのあいだに、岩谷さんとは仕事をご一緒したりなど、接点は?

中塚:直の上司だったので、めちゃくちゃありました。岩谷さんに「飲み行こう!」って誘っていただくことも多かったです。ボクがナムコを辞めてからもずっと、何かにつけて連絡のやりとりをさせていただいています。

『パックマン』の"コーヒーブレイク"の演出って、「まさに、このことだな」とコーヒーを飲みながら気が付いたんです(sasakure.UK)

― ちなみにおふたりは、『パックマン』を実際にプレイされたのは、いつぐらいですか?

sasakure.UK:ゲームボーイ版が初めてでした。たしか小学生のとき。自分が生まれたときにはすでにファミコンがあったんですけど、ゲームボーイ版にハマったその後に、ファミコン版で遊びました。ちなみに、アーケード版をプレイしたのは、大人になってしばらく経ってからでしたね。東京・錦糸町に、昔のテーブル筐体が遊べるミカドっていう純喫茶がありまして、アーケード版は、そこでプレイしたんです。そのときに初めて、『パックマン』の"コーヒーブレイク"の演出って、「まさに、このことだな」とコーヒーを飲みながら気が付いたんですよ(笑)。

中塚:あはは! ボクはもう超リアルタイムですね。小学校1~2年のとき、近所の駄菓子屋の軒先に『パックマン』が置いてあって。それまでは、『スペースインベーダー』(1978年・タイトー)や、『ギャラクシアン』(1979年)などで遊んでましたね。いまで言う、超クラシックなゲームばかり。ナムコから『ギャラクシアン』が出たときに、友だちと「画面がキレイだね!」なんて言ってたんですけど、初めて『パックマン』を見たときは、それ以上に、グラフィックがものすごくキレイかつポップに感じて。しかも、これまでのゲームはジョイスティックとボタンがあって、敵を撃つゲーム性が中心でしたけど、『パックマン』はジョイスティックしかついてないし、敵も撃たないし、「何だコレ!?」って、うちの小学校ではとても話題になったんですよね。

sasakure.UK:いい時代ですね! やっぱり『パックマン』は大人だけではなく、小学生にも受けたヒット作品なんですね。当時、どのくらい『パックマン』が人気だったのかというのは知らないので、その時を知っている方のお話を聞くとやっぱりすごいんだなって実感します。

中塚:日本もすごかったけど、『パックマン』は北米での人気のほうがすごかったんですよ。関連グッズもたくさん発売されたし、アニメ化にもなったし。

sasakure.UK:そうなんですね!

『パックランド』を匂わせたいな、とも思ったので、一部のコード進行は『パックランド』のコード順規にしてます(中塚)

― おふたりの楽曲についてお伺いしたいのですが、まずsasakure.UKさんの『PAC-MAN NEVA PAX!!』という曲名の意味は?

sasakure.UK:直訳すると、「『パックマン』は決して"パック"しない」っていう意味なんですけど、「『パックマン』は型にはめない(型にはまらない)」というニュアンスで付けました。『パックマン』って、レースゲームにもなってますし、アクションアドベンチャーにもなってますよね。また『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018年・任天堂)にも登場しますし。そのように、さまざまな垣根を超える存在で、ひとつの型にはまるゲーム(キャラクター)ではないことを表現したかったんです。あと、"PAX"ってラテン語では"平和"を差すのですが、そういう、さまざまな単語の意味合いを考えながら、このタイトルにしました。

― 曲調としては、レイブフィーリングといいますか、EDMっぽいストレートな作品で、sasakure.UKさんの曲のなかでは新鮮な感じを受けました。

sasakure.UK:そこはかなり意識しながら作りましたね。さきほども少しお話をしましたが、『パックマン』は、子どもや女性向けに作られているという背景があるので、年齢や性別にとらわれずに楽しんでもらえるよう、かわいい要素やスタイリッシュだと思える要素を盛り込みつつ、4つ打ちでノリやすい楽曲に仕上げました。

― なるほど! 対する、中塚さんは、『Ladies and PAC-MAN』というタイトルですが、これはどのような意味があるのですか?

中塚:これは、ショーが始まるときの常套句である「レディース&ジェントルマン」をもじっています。最初に曲のサビである「♪Ladies~」っていうフレーズが頭のなかにあったので、語呂もいいし、このタイトルがいいかなって(笑)。曲のコンセプトとしては、4体のゴーストがフリースタイルでラップをしていく、というのはさきほどもちょっとお話しましたが、ゴーストの名前は日本語だと、アカベエ(赤)、アオスケ(水色)、ピンキー(ピンク)、グズタ(オレンジ)なんですけど、英名だとブリンキー(赤)、インキー(水色)、ピンキー(ピンク)、クライド(オレンジ)って言うんですね【※注1】。しかも、当時、北米では『パックマン』がアニメにもなりまして、いま言った4体以外のゴーストも登場するんです。そのうちの1体は『パックランド』にも登場する"スー"という紫色のゴーストなんですけど、そいつも含めて全部登場させたかったのですが、ただ、それだと『パックマン』の曲ではなく、『パックランド』になっちゃうなと思って(笑)。

【※注1:現在は全世界共通で、ブリンキー、インキー、ピンキー、クライドの名前に統一されている】

sasakure.UK:確かに!(笑)

中塚:とはいえ、『パックランド』を匂わせたいな、とも思ったので、途中といちばん最後のところのコード進行は『パックランド』のコード順規にしてます(笑)。

sasakure.UK:おおー! なるほど!(笑)

楽曲を作るときにはまず物語があって、最初、その物語のオチから作るんです(sasakure.UK)

― お互いの楽曲を聴いたときの第一印象は?

sasakure.UK:もう、素晴らしすぎました。イントロからハッとさせる、中塚さんならではのカットアップ。『Stars In Your Eyes』のような感じで、飛び道具感が入りつつも、要所要所は技巧的にまとめながら、最終的にやっぱりキャッチーなバランスで仕上がっていて……。また、変調の声のラップを入れることで、難解になりそうな音響をすごく聞きやすくしていてド肝を抜かれたとしか言いようがありません。

中塚:ありがとうございます! いやsasakure.UKさんの曲もすごかったです。もうこれは、ボクがDJをやるときに完全に使わせてもらいます。sasakure.UKさんの作品って、「こう来たか!」という驚きが多いんですよね。

sasakure.UK:ありがとうございます! ぜひいっぱい流していただけると光栄です。

― sasakure.UKさんはご自身でも映像を手掛けていて、また中塚さんはCMやドラマなど映像作品に曲を提供することも多いですよね。なお今回、おふたりとも楽曲のミュージックビデオを公開されていますが、ビジュアルや映像との関係性という部分では、どのようなことを意識しつつ楽曲制作を手掛けられたのでしょうか?

sasakure.UK:自分は、けっこう映像をイメージしながら曲を作ること多くて、最終的には"音と映像"でアウトプットするのが自身の作品の理想形なのかなと思っています。今回制作した楽曲に関しても、映像を意識しながら、音のはめ込みなどを考えつつ作りました。たぶん、他にそういう作り方をしている人はあまりいないかもしれないでのですが、楽曲を作るときにはまず物語があって、最初、その物語のオチから作るんですよ。たとえば、「地球は滅んだけど、ロボットは生き残った」など、そういう簡単なストーリーに音を当てはめていく、という流れで曲を制作しています。なお、今回の楽曲は、"パックマン"が筐体を飛び出して縦横無尽に駆け巡るイメージが最初に浮かびました。

― sasakure.UKさんの楽曲は、音だけで聞くのと映像付きで聞くのとでは、全然違った感じがしますよね。とくに映像といっしょに聞くと、音がすごく入ってくるというか……。

中塚:そう、まさに映像が答え合わせになるみたいな感じで。

sasakure.UK:ありがとうございます。今回のミュージックビデオは、映像でお世話になっているツツミヒデアキさんに、モーショングラフィックスで制作していただきました。"パックマン"がカードになったり、当時のサイバーっぽさを残しながらも未来感のある映像になっていたりと、制作途中には"自分でも思っていなかった答え合わせ"といいますか、"ここはこっちのほうがハマったな"というような発見もあり、それが面白かったりもするんですよね。

中塚:なるほど! ……ちなみに、ボクのほうのミュージックビデオはいつも一緒にやっている杉江宏憲さんという映像作家さんにお願いしたのですが、有名どころですと『NEWS ZERO』のオープニング映像などを作られています

sasakure.UK:あ、中塚さんの『JAPANESE BOY』のミュージックビデオを制作された方ですね。ボクも大好きです。

中塚:そうです。ありがとうございます! 先日、杉江さんと打ち合わせをして、彼から絵コンテをいただいたんですけど、それがもう素晴らしくて。多分、杉江さんは映像の人で、ボクは音楽の人だからだと思うんですが、映像だったら映像、音楽だったら音楽で言いたいことをそこで言って、ほかには付け足さないみたいな、お互いそういう考えの持ち主なので、こうしっくりくるんですよね。今回も、ボクの好きな『パックマン』を、杉江さんと共有したいなと思って、彼にお願いしたんです。なお、sasakure.UKさんは頭のなかに映像(物語)があって、それに音を付けていくとおっしゃっていましたが、ボクの場合は音楽を作って、それを映像の人に渡して勝手に料理してもらうという感じです。例えるならば、帰納法か演繹(えんえき)法かみたいな違いでしょうかね。

『ビデオ・ゲーム・ミュージック』は自分の音楽の記憶に大きく刷り込まれています(中塚)

― ここまでお話を伺ってきて、おふたりが相当なゲーム好きだということはわかりましたが、ご自身に影響を与えたゲームミュージック、また好きなゲームミュージックはありますか?

sasakure.UK:音楽に興味を持ち始めた、という意味では、『ビートマニア』シリーズ(1997年・コナミアミューズメント)ですね。そこから曲作りや編曲に目覚めました。好きな作品が多すぎて悩みますが、プレイステーションの『moon』(1997年・アスキー)っていうRPGも、自分の人生観に影響を及ぼしているんじゃないかというくらい、ゲームの内容も音楽も好きですね。 "戦闘のないRPG"、"時間で変化する人々の行動"など、当時とはしては画期的なゲームシステムだったのですが、なかでも"MD(Moon Disc)システム"という、ゲーム中に集めた音楽(MD)を自由にかけて遊べるという仕掛けが斬新でした。ポップスからジャズ、アンビエント、クラブ系など、さまざまジャンルの楽曲があって、曲を聞きくらべて楽しむ、というようなこともできたんです。本作のゲーム性やこのような仕掛けが自分の創作の原点のひとつになっているんじゃないか、という感じもしますね。

中塚:あ、『moon』はボクが初めてお仕事として音楽を提供したゲームですよ。いろんなアーティストが曲を提供しているのですが、そのうちのひとりとして参加させていただいたんです。

sasakure.UK:え? 中塚さんってどの曲ですか? 

中塚:QYPTHONE(キップソーン)名義で提供した『POP MAY DAY』という曲です。

sasakure.UK:そうだったんですね! そのころから中塚さんの曲を聞いていた、ってことですよね。『POP MAY DAY』は砂漠のマップでよくかけていました。最近、この『moon』のフルサウンドトラックがリリースされるというニュースを見て、速攻で予約しちゃいました。

中塚:さすが!(笑) ボクのほうはといいますと、日本初のゲームミュージックのサウンドトラック『ビデオ・ゲーム・ミュージック』(1984年・アルファレコード)と、その後にリリースされた『ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』(1985年・アルファレコード)、このふたつのレコードに多大な影響を受けてますね。小学校のときにレコードが擦り切れるほど聞きましたもん。なお、『ビデオ・ゲーム・ミュージック』は、YMOの細野晴臣さんがプロデューサーしているんですよね。この2枚が、自分の音楽の記憶に大きく刷り込まれています。QYPTHONE(キップソーン)というバンドをやっていたときから、ボクはファンクだと思ってやっていたのに、「中塚くんのバンドはピコピコして面白いよね」と言われることもあって、だから多分、ゲーム的な何かがにじみ出ちゃってるじゃないですかね?(笑)

― ちなみに、『パックマン』以外にアレンジしてみたいゲームミュージックはありますか?

中塚:絶対『ドルアーガの塔』ですね!

sasakure.UK:ボクも『ドルアーガの塔』の曲、好きですね!

中塚:だいぶ前の話になりますが、以前、ナムコのサウンドチームの同期にお話をいただいて、『ゼビウス』30周年を記念したトリビュートアルバム『XEVIOUS 30TH ANNIVERSARY TRIBUTE』(2013年・NAMCO SOUNDS)に楽曲提供させていただいたんです。そのとき、「数年したら『ドルアーガの塔』も30周年だから、そのときもぜひアルバムの参加、よろしくね!」なんて言われて、楽しみにしていたんですけど、全然声がかからなくて。「おかしいなー」と思って、のちのち聞いてみたら「あー、30周年のときにアルバムの企画を進めるのを忘れてた! じゃあ40周年のときにぜひ!」って(笑)。

sasakure.UK:10年延びちゃったの残念ですね(笑)。

中塚:うん(笑)。でも、40周年のときに、sasakure.UKさんもボクも参加できたらうれしいですよね(笑)。

『パックマン』のように世代を超えて伝わる作品は永遠の憧れ(sasakure.UK)

― 最後になりますが、あなたにとって『パックマン』とはどのような存在でしょうか?

sasakure.UK:"時代を越えて、ずっとみんなの心のなかにいるヤバい奴"ですね。もちろん"ヤバい奴"っていうのは"いい意味で"ですよ(笑)。『パックマン』のように世代を超えて伝わる作品って、ボクにとっては永遠の憧れなので、自分もそういう存在になりたいと思います。

中塚:ボクは、"自分の人生にずっと寄り添っている存在"かな。こうやってボクが、人生を送っているあいだ、ずっとそばに『パックマン』がいるような感じです。小学生のときに初めて出会って、それ以来ずっと大好きで、そんな『パックマン』を作った人と働きたいと思って、大学を卒業してナムコに就職して、最終的には自分は音楽畑に行っちゃったけど、今回この企画をいただけて、ことあるごとに『パックマン』が寄り添ってくれている、っていう感じですね。ちなみに『パックマン』30周年のときは、テイ・トウワさんとスチャダラパーさんがアニバーサリー楽曲の制作を担当したんですよね。2組とも先輩ですけど、あのときは羨ましくも、悔しかったのを覚えていますもん(笑)。

sasakure.UK:あはは!(笑) ボクも今回、参加できてとても嬉しかったです!

― ありがとうございました!
(※2020年6月5日(金) ビデオ通話にて収録)

プロフィール

  • sasakure.UK

    2月11日、福島生まれ。作詞・作曲・編曲の全てをこなすサウンド・プロデューサー。 幼少の頃、《ゲームは一日一時間まで!》という非常に過酷な条件の中で、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に多大な影響を受けて育つ。学生時代には男声合唱を学びながら、木下牧子、三善晃といった作曲家や、草野心平、新美南吉などの詩人・文学作家の作品に触れるようになり、この頃から独学で創作活動を開始。 インターネット上で自身のサイトを拠点に、オリジナルのインスト楽曲を発表する活動の後、“初音ミク“などの音声合成ソフトVOCALOIDにインスピレーションを受け、作詞にも挑戦。これらの楽曲を動画サイトに公開するようになると、その作品性の高さから一躍注目を集めるようになる。
    時代を越えて継承されてゆく寓話のように、物語の中に織り込められた豊かなメッセージ性を持つ歌詞と、緻密で高度な技術で構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。また、楽曲のコンセプトや世界観をもとに自らイラストや映像の制作も手掛けるほか、音楽表現を拡張するため結成されたバンド「有形ランペイジ」のプロデュース、自身の楽曲をモチーフにしたゲームの監修など、そのマルチな才能も非常に評価が高く、近年では様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションも企画・監修している。

  • 中塚 武

    自ら主宰のバンドQYPTHONE(キップソーン)としてドイツのコンピレーションアルバム『SUSHI4004』で海外デビュー。2014年11月、Disneyオフィシャルアルバム『Disney piano jazz “HAPPINESS” Deluxe Edition』をリリース。Disney楽曲を独自の編曲とピアノ演奏によって再解釈し、Disneyファンからも大きな反響を得る。2016年3月リリース『EYE』のリード曲「JAPANESE BOY」MVが、アメリカ・フランスはじめ世界8カ国のフェスで上映されVimeo Staff Picksにも選出。2019年6月ポカリスエット新CMで吉田羊と鈴木梨央デュエットによる「揺れる想い」カバーを制作。TVCMでは異例のフルサイズバージョン動画も公開され大きな話題となる。

リリース情報

  • INTERVIEW Vol.1 INTERVIEW Vol.1
  • INTERVIEW Vol.2 INTERVIEW Vol.2
  • INTERVIEW Vol.3 INTERVIEW Vol.3